法的根拠をたどりまくる総務係、川池です。
社員からマイナンバーを収集する際に必要な本人確認。
扶養親族について、ある日ふと気になったことがあります。
それは
配偶者の本人確認書類は提出してもらうのに
その他の扶養親族については提出を求めていないことです。
なぜ配偶者だけは書類提出が必要なのでしょうか。
この記事ではマイナンバーの本人確認義務について調べたことをまとめています。
配偶者の本人確認書類が必要な理由
配偶者の本人確認書類を提出してもらわなければならない理由は
国民年金第3号被保険者の届出に関係があります。
社員が配偶者を扶養している場合、配偶者は
- 健康保険被扶養者
- 国民年金第3号被保険者
となります。
国民年金法では、第3号被保険者がその資格を取得するにあたり
扶養主の事業所を経由して厚生労働大臣に届け出なければならないと定められています。
5 第三号被保険者は、厚生労働省令の定めるところにより、その資格の取得及び喪失並びに種別の変更に関する事項並びに氏名及び住所の変更に関する事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。ただし、氏名及び住所の変更に関する事項であつて厚生労働省令で定めるものについては、この限りでない。
(国民年金法 第12条)
6 前項の届出は、厚生労働省令で定める場合を除き、厚生年金保険法第二条の五第一項第一号に規定する第一号厚生年金被保険者(以下「第一号厚生年金被保険者」という。)である第二号被保険者の被扶養配偶者である第三号被保険者にあつては、その配偶者である第二号被保険者を使用する事業主を経由して行うものとし、…(後略)…
この条文からわかるポイントは
届出をするのは配偶者本人であるということ。
配偶者本人が厚生労働大臣に届出をするにあたり
扶養主の事業所を経由しなさいと言っているのです。
届出の流れ:配偶者→扶養主の事業所→厚生労働大臣
配偶者の次にくるのが事業所なので、事業所が本人確認義務を負うことになるのです。
書類提出を求める理由もそこにあるわけですね。
あれ?社員はどうなるの……?
この場合、扶養主である社員は「代理人」となります。
あくまで配偶者の代理人として、本人確認書類を事業所に提出する立場なので
先ほどの届出の流れには含まれていません。
配偶者以外の扶養親族は本人確認書類の提出を求めない理由
ここで改めて
扶養親族のマイナンバーを収集する目的について考えてみます。
- 健康保険被扶養者届
- 扶養控除等申告書
これらの届書(申告書)を提出するのは、扶養主である社員です。
先ほどの国民年金第3号被保険者とは違い
扶養主である社員が、扶養親族のマイナンバー記入および本人確認を済ませた状態で
事業所に提出する必要があります。
配偶者:事業所に本人確認義務がある(国民年金第3号被保険者の届出)
配偶者以外の扶養親族:扶養主である社員に本人確認義務がある
配偶者以外の扶養親族について、事業所が本人確認書類の提出を求めない理由は
扶養主である社員がすでに確認を済ませているからです。
自分の家族の本人確認……というのもおかしな話ではありますが(笑)
考え方としてはわかりやすいかなと思います。
「個人番号利用事務実施者」と「個人番号関係事務実施者」
マイナンバーの取り扱いについて、さらに理解を深めるため
「個人番号利用事務実施者」と「個人番号関係事務実施者」の話をします。
マイナンバーを取り扱うことができる方は、制度上、各種手続きを行う者(健康保険組合は「個人番号利用事務実施者」)や、これらの手続を取次ぐ者(事業主「個人番号関係事務実施者」)に限定されています。
(厚生労働省ホームページより)
- 個人番号利用事務実施者:
事務処理においてマイナンバーを利用する必要があると法律で認められた、行政機関その他の団体。 - 個人番号関係事務実施者:
必要な範囲内で、個人番号利用事務実施者にマイナンバーが記載された届出書等を提出する事業所等。
それぞれ法律に定められています。
10 この法律において「個人番号利用事務」とは、行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者が第九条第一項から第三項までの規定によりその保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用して処理する事務をいう。
(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第2条)
11 この法律において「個人番号関係事務」とは、第九条第四項の規定により個人番号利用事務に関して行われる他人の個人番号を必要な限度で利用して行う事務をいう。
12 この法律において「個人番号利用事務実施者」とは、個人番号利用事務を処理する者及び個人番号利用事務の全部又は一部の委託を受けた者をいう。
13 この法律において「個人番号関係事務実施者」とは、個人番号関係事務を処理する者及び個人番号関係事務の全部又は一部の委託を受けた者をいう。
別表第一の上欄に掲げる行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者…(中略)…は、同表の下欄に掲げる事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
2 地方公共団体の長その他の執行機関は、福祉、保健若しくは医療その他の社会保障、地方税…(中略)…又は防災に関する事務その他これらに類する事務であって条例で定めるものの処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
3 法務大臣は、第十九条第八号又は第九号の規定による戸籍関係情報…(中略)…の提供に関する事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で情報提供用個人識別符号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
4 健康保険法…(中略)…その他の法令又は条例の規定により、別表第一の上欄に掲げる行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者又は地方公共団体の長その他の執行機関による第一項又は第二項に規定する事務の処理に関して必要とされる他人の個人番号を記載した書面の提出その他の他人の個人番号を利用した事務を行うものとされた者は、当該事務を行うために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第9条)
(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 別表第一より抜粋)
- 全国健康保険協会又は健康保険組合…健康保険法による保険給付の支給、保健事業若しくは福祉事業の実施又は保険料等の徴収に関する事務であって主務省令で定めるもの
- 厚生労働大臣又は共済組合等(日本私立学校振興・共済事業団、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合又は全国市町村職員共済組合連合会をいう。以下同じ。)…厚生年金保険法による年金である保険給付若しくは一時金の支給又は保険料その他徴収金の徴収に関する事務であって主務省令で定めるもの
- 厚生労働大臣…国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)による年金である給付若しくは一時金の支給、保険料その他徴収金の徴収、基金の設立の認可又は加入員の資格の取得及び喪失に関する事項の届出に関する事務であって主務省令で定めるもの
- 国税庁長官…国税通則法その他の国税に関する法律による国税の納付義務の確定、納税の猶予、担保の提供、還付又は充当、附帯税(国税通則法第二条第四号に規定する附帯税をいう。)の減免、調査(犯則事件の調査を含む。)、不服審査その他の国税の賦課又は徴収に関する事務であって主務省令で定めるもの
ちょっと引用が長くなりましたが(汗)
これらの条文から
私たち総務担当者にとって主な書類提出先である健康保険組合や年金事務センター、税務署などは
「個人番号利用事務実施者」にあたることがわかります。
事業所等は「提出しろ」と言われているから収集しているだけであって
マイナンバーを利用した仕事があるわけではありません。
利用しないから「個人番号関係事務実施者」だと思えば理解しやすいですね。
「個人番号関係事務実施者」と本人確認義務
「個人番号関係事務実施者」になるのは事業所だけではなく
社員も該当する場合があります。
前述の健康保険被扶養者届、および扶養控除等申告書の提出に関係しています。
これらは届書(申告書)に扶養親族のマイナンバーを記入し
本人確認を済ませた状態で、事業所に提出するのでした。
扶養主である社員がマイナンバーを取り扱っていることから
この場合は当該社員が「個人番号関係事務実施者」となるのです。
なお、国民年金第3号被保険者届を提出する場合は
扶養主である社員はあくまで代理人。
本人確認義務は事業所にあるため、この場合は事業所が「個人番号関係事務実施者」となります。
以上のことを図で表すと、このようになります。
おわりに
マイナンバーの本人確認義務について調べたことをまとめてみました。
社員やその扶養親族に関するプライバシーは厳密に取り扱う必要があります。
提出してもらう意味を十分に理解した上で実務に当たるべきですね。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。