フレックスタイム制のデメリットとは?導入を阻む問題と解決策

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朝の通勤混雑が苦手な事務員・川池です。

出社時刻をずらすことができるフレックスタイム制
通勤混雑対策のひとつとして知られています。

しかし
厚生労働省の令和3年就労条件総合調査によれば
変形労働時間制を採用している企業のうち、フレックスタイム制を採用しているのは6.5%でした。

なぜフレックスタイム制は普及しないのでしょうか。
この記事では
フレックスタイム制の導入を阻む問題とその解決策について考察しています。

もくじ

フレックスタイム制の導入を阻む問題とは

フレックスタイム制の導入を検討する場合、問題となるのは
主に次のようなことです。

手続きが面倒(会社・実務担当者)
  • 就業規則を変えるのが面倒
  • 労使協定の締結が面倒
  • 勤怠管理や給与計算が面倒
社員間のコミュニケーション
  • 会議の日程調整が困難
  • 出社状況の把握が困難
  • 在宅社員の業務を出社している社員が代わって行わなければならない場合がある
働き方の質
  • それまでの勤務リズムを崩したくない
  • スケジュール管理の苦手な社員にとっては生産性が下がる
  • 残業ばかりして結果的に通常の勤務形態と同じになる
取引先からの信用
  • 打ち合わせの日程調整が困難
  • スムーズに連絡できない

フレックスタイム制の導入を阻む問題はどうすれば解決できるか

それでは4つの問題について解決策を考えてみます。

問題1:手続きが面倒(会社・実務担当者)

フレックスタイム制の導入に際して必要な手続きは、主に次の3つです。

  • 就業規則の変更
  • 労使協定の締結
  • 勤怠管理や給与計算の設定変更

具体的に何をどうすればいいのか見ていきましょう。

就業規則の変更

必要なのは、始業・終業時刻を社員の自主的決定に委ねる旨を明記することです。
厚生労働省のパンフレットに就業規則の変更例が記載されています。

就業規則におけるフレックスタイム制の記載例を示すための図
就業規則におけるフレックスタイム制の記載例
厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』より

労使協定の締結

定める項目は主に次のとおりです。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 清算期間
  • 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
  • 標準となる1⽇の労働時間
  • コアタイム(※任意)
  • フレキシブルタイム(※任意)

労使協定で定める内容についても、先ほどのパンフレットに記載があります。

フレックスタイム制に関する労使協定の例
厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』より

清算期間1か月以内であれば、労基署への届出は不要です。

このように
記載例に沿って作成すれば、手続き自体はそこまで面倒なものではないことがわかります。

とはいえ
社員の意見を確実に吸い上げる必要があるため、そう簡単に進められるものではありません。
決定を急がず、時間をかけて話し合うことが大切です。

勤怠管理や給与計算の設定変更

近年は専用のシステムを導入している会社も多いことでしょう。

わが社も勤怠管理、給与計算いずれもシステムを使用しています。
試しにフレックスタイム制の設定をしてみたところ
清算期間内で所定労働時間を超えた分について集計してくれました。

なんでもやってくれますね!
もはやシステムなしでは仕事ができません……

以上のことから
実務担当者にとって面倒だと思われる手続きは「やろうと思えばできる」という結論になりました。

結論1:手続きが面倒⇒やろうと思えばできる

問題2:社員間のコミュニケーション

フレックスタイム制の導入によって
「誰かがいて、誰かがいない状態」が頻繁に発生します。

この状態で懸念されるのは
不在の社員に代わり、出社している社員がこなさなければならない業務が出てくることです。

また
フレックスタイム制を特定の職種に限って導入することになった場合は
導入されていない職種の社員が不満を抱いてしまう可能性もあります。

私はいくつかの職場を経験してきましたが
社内で課と課が対立するという構図をたくさん見てきました。

フレックスタイム制の導入が、対立を加速させてしまうような事態も否定できません。
大切なのは、日頃から風通しの良い職場を作ることです。

結論2:社員間のコミュニケーション
⇒フレックスタイム制の導入以前に、日頃から気持ちの良いコミュニケーションがとれているかどうかが重要

問題3:働き方の質

フレックスタイム制に意欲的な社員が
はたしてその効果を十分に発揮できるかどうかという問題です。

いざ利用してみるとうまくスケジュール管理ができず
非効率になってしまった……ということもあるでしょう。

フレックスタイム制は、ある程度自由な働き方ができる分
いかに生産性を上げられるかという責任を社員自身が担う難しさがあります。

生産性の向上を目的として導入したのにもかかわらず
逆の結果になってしまっては意味がありません。

フレックスタイム制の導入効果は
試行錯誤の末にわかってくることを前提に取り組むのがよさそうです。

結論3:働き方の質
⇒フレックスタイム制に意欲的な社員でも、すぐには結果が出なかったり、やってみて合わなかったりする場合も考えられる。しばらくは試行錯誤を繰り返すことが大切。

問題4:取引先からの信用

取引先がフレックスタイム制を導入しておらず、主な連絡手段が電話である場合
連絡のやりとりがスムーズでなくなるのは想像に難くありません。

わが社では、緊急時の対応として在宅勤務が認められています。
その場合、総務のわたしは在宅している担当社員と取引先との連絡をつなぐことがありますが
これがなかなかうまくいかないと感じています。

もしフレックスタイム制が導入されたとなれば
さらに取引先を惑わせてしまうでしょう。

解決策としては
担当社員が自らのスケジュールを取引先と共有することや、社員に業務用携帯を貸与することなどがあげられます。
しかしいずれも取引先にとっては煩わしく、会社にとってはコストがかかります。

「この会社は面倒だ」という印象を与えてしまえば
取引先を失う危険があります。
長い時間をかけて築き上げた信用を、自ら崩すようなことがあってはなりません。

フレックスタイム制の導入が取引に及ぼす影響や、同業他社の状況などについて
十分なリサーチが必要です。

結論4:取引先からの信用
⇒取引に及ぼす影響や、同業他社の状況などに関するリサーチの結果によっては、フレックスタイム制の導入が不利益につながる場合もある。

まとめ

以上より
フレックスタイム制の導入を阻む4つの問題と、その解決策を考えてみました。

各問題に対する結論をおさらいします。

フレックスタイム制の導入を阻む4つの問題と、その解決策(おさらい)
  • 手続きが面倒⇒やろうと思えばできる
  • 社員間のコミュニケーション⇒フレックスタイム制の導入以前に、日頃から気持ちの良いコミュニケーションがとれているかどうかが課題である
  • 働き方の⇒フレックスタイム制に意欲的な社員でも、すぐには結果が出なかったり、やってみて合わなかったりする場合もあるため、しばらくは試行錯誤を繰り返すことが大切
  • 取引先からの信用取引に及ぼす影響や、同業他社の状況などに関するリサーチの結果によっては、フレックスタイム制の導入が不利益につながる場合もある

この結論をもとに
わが社でフレックスタイム制を導入することは可能かどうか考えてみたところ……
「厳しいだろう」という結果になりました。

理由は、取引先からの信用です。
もし導入するとなれば
同業他社と足並みをそろえなければならないと予想されます。

ただし
それをクリアできれば、決して導入は難しいものではないということもわかりました。

労働はしんどいものだからこそ
少しでも働きやすい環境づくりを目指したいですね。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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